薄燈林

主に見た映画やアニメとかの感想をだらだらと

キラーズオブザフラワームーン:雑記

 キラーズオブザフラワームーン見てきた。3時間もあって後半は己(尿意)との闘いだったけど、3時間以上の上映時間で飽きることは一切無く、高い満足感を得られること間違いはないだろう。次は巷で話題の饅頭を持参すべきか。

 

 この映画では白人による、有色人種への犯罪(その多くは殺人)が頻繁に出てくる。アメリカのティーンなどもこの映画は人気らしく、先祖たちが振るってきた実際に合った事件であるから当然ショックも大きかっただろう。だからと言って、日本人なので軽傷で済んだというわけでは無いが。

とにかく、オーセージの部族に対する陰謀、殺人は残酷極まりない。財産目当てに女性に近づき、結婚した後で財産の継承権を頂いたらさっさと殺してしまう。結婚した傍から次々と姉妹が死んでいく。知り合いも、ご近所さんも、次々死んでいく。

警察ももちろんグルなのでダメダメだ。特にオーセージの権力者であり、名士である白人のウィリアム・ヘイル、主にキングと呼ばれている(呼ばせてもいる)、彼が多くの白人や役人を抱き込んで陰謀を弄している。今作ではまさに彼の王国が築かれつつあった。

 

 この映画は嫌な感覚に支配されている。状況が好転しそうに無いという感覚だ。

一応だが原作のあらすじを調べてから見に行った。原作小説では、事件に対し、FBIの介入があり、一連の犯行の首謀者としてキングが有罪判決を受けるまでは知っていた。

そこまで知っていても嫌な空気が画面から発せられている。一連の事件を通しても解消されなかったそれは、現代にも通じている、常に身近な問題、差別だ。差別の歴史について詳しくはないのでここでは説明しないが、純粋で血なまぐさい、今もなお続く差別がそのままスクリーンに映し出されていた。

当時の一般的な白人(アメリカ人?)であるキングは、オーセージをただの蛮族として扱わない、彼らは賢いと、用心しろとさえ主人公に説明する。言葉が通じる、高い思考能力を持っている、そこまで言っておいてなお彼らを根絶やしにするように次々に殺害を指示するのはなぜだろうかと不思議でしょうがなかった。しかし今なら少しだけ分かる、これが差別なのだ。

 同じ人に見えるが、オーセージからは財産を奪ってもいい、殺してもいいと、彼は同胞に告げる。気の小さいキングのいとこである主人公でさえ、圧力に負け、愛していた妻にさえ毒を盛ってしまう。人ではあるが、同じ人の様には扱わない、あるいは自分たちは優れた人種であり、"それ以外"はどうなってもいいというアイデア。もはやゲーム感覚で次々と奪っていく。まるでギャングのように。

奪う快感、増える財産、そして白人という特権意識。決して貧しくはない彼らは、強欲と傲慢に浸りながら、犯行を重ねていった。

 生々しい暴力に溢れているが、差別について、実際にどのような空気感でそれが行われているかを知りたいなら、この映画は必見だろう。キング役のロバート・デ・ニーロの演技がとても恐ろしく、殊更に人間の闇のような精神性が光っていたし。ディカプリオ演じる主人公アーネスト・バークハートは気弱な小悪党ではあるが、妻を愛する気持ちは嘘ではないことも伝わっていたからこそ、彼の微かな善性が落ちていく様は見ていられなかった。

 最後まで読んでくれた人は大体ネタバレOKか、観に行った人たちであるだろうが、もし未見なら是非時間を作って観に行くべきだと思う。日本にいると差別を目撃する、あるいは差別の対象となることはあまり無いだろうから。